回想法とは、1960年代のアメリカで開発された認知症のケアに使われている心理療法のことです。認知症の方は最近あったことを記憶するのは苦手ですが、昔の出来事はよく覚えている特性を持っています。これを利用して、懐かしい歌や写真などを見せることで思い出話をしてもらい、自分の人生がどんなものであったかを見つめ直して生きる希望を生み出すための療法です。認知症の高齢者とコミュニケーションを深めたり、楽しい思い出話をすることで精神的に安定させたりする効果も期待できます。回想法に使われる道具は、昔の写真や音楽、若い頃読んでいた本やよく使っていた生活用品などが挙げられます。住んでいた土地の特産品も良いでしょう。
回想法は道具がなくても行えますが、あった方が記憶を引き出すための手助けになります。高齢者はもちろん、介護士もスムーズに回想法を進めやすくなるでしょう。回想法を行う前には、質問するテーマを決めておきます。高齢者の当時のライフスタイルをあらかじめ把握しておき、小さい頃の遊びや学校での思い出のように答えやすい質問を用意します。回想法は高齢者の話を聞くとはいえ、どんな話題でもOKではないのです。当然ながら、日常の会話をするだけでは効果を得られません。あくまで昔の楽しかった思い出に触れることでその当時の楽しい記憶が蘇り、認知症の高齢者の心が落ち着くような効果を得ることが、回想法の意図です。そして、その思い出を介護士に話すという行為が認知症の進行を和らげることも期待されています。